『ほしをつくるおっさん』
文章・文法評価:5.0
ストーリー評価:4.0
とりあえず言わせていただきたいのが、文章うまいですねってことです。冒頭のファッティ・マダムのくだりでいきなり吹きました。そうして笑わせておきながらも文章そのものは一見硬めで、なのに読みやすい。だけど綺麗な表現はとても綺麗。外のことを知らない虫ポケモン視点というのも終始しっかり意識されていて、比喩表現などにも違和感はなかったです。
文章のことばかり言ってますが、キャラクターも読み終わった後全員大好きになってました。綿雲作るおっさんも家族想いでポケモンに優しいいい人なのがさり気ない描写から伝わってくるし、ツチニン(テッカニン)の硬い喋りと義理に熱く素直な性格もかわいい。ラクライのねーちゃんも全体の出番は多くないけれどラストにしっかり生きてるしかわいい。ヌケニンの相棒のふわふわしてんのに相棒想いなとこも好きです。おっさん二人(もといボルトロスとトルネロス)も、文中で茶化しつつも神様らしい面倒見の良さとおおらかさが描かれており、好きになれました。
物語そのものも、人からしてみれば小さくともポケモンニ匹には大きな冒険という感じで、考えてみると祭り会場とヒオウギ付近くらいしか冒険してないのに大冒険譚を読み終わったような読後感もありました。
こんだけベタ褒めなのになんでストーリー評価これなの、という理由は、あまりに入れこみ過ぎてヌケニンの結末に納得がいかなかったからです。どうしてだ! どうしてあんなに素敵な彼があんなことにならなくてはならんかったのだ! となってしまいまって。結構ショックでした。なのでこの点に。
もちろん相棒の結末も、ただ劇的なイベントに終わらず、ラストの切なくも素敵な終わり方にしっかり生かされているのはわかっています。ヌケニンのことを察したおっさんのセリフも、おっさんの優しさが出ています。
でもショックはショックだったので。裏を返せばそのくらいキャラクターに感情移入出来たということで、「ちっ外野がうっせーなー」と流しつつも、褒め言葉だと思ってくだされば幸いです。
『風鈴の君』がホロリとしながらも最後までキャラクター達を静かに見守れる作品なら、こっちの『ほしをつくるおっさん』はなぜだ! なぜなんだ! と熱くなってしまう作品といいますか。
以下特に好きなシーン
>まるでおっさんまでもがきらきらと輝いて見える。
想像して笑いました。
>空中で口論をしているのは雲に乗って空を飛ぶ青と緑のおっさんだった。私も〈お友達〉も、思わず声を揃えて「おっさん!」と叫んでしまったくらいだ。
吹き出して草生えましたww探してるのもおっさんだし、おっさん祭りじゃーwと読みながら思いました。
後わたあめをおっさんが作るところでツチニンが感動してるシーン全体がかわいくて綺麗です。
星から雲が出来るって想像のしかたも比喩として綺麗だしホントかわいい。ハゲ頭を太陽って言ってるところも笑えるのに綺麗でかわいいというか。
- 焼き肉
- 2014/08/16 (Sat) 13:37:06