『風鈴の君』
文章・文法評価:4.5
ストーリー評価:4.5
物語としてはとても王道で、展開も予想を裏切らないものです。ですが王道ならではの素直なストーリーが、素直なユキノの恋心とピッタリシンクロしていたと思います。
女の子らしい星座占いのくだりとか、どこか浮世離れしてるヒナタの雰囲気とか、夏の木陰で一休みしながら遠くの喧騒を聞いてるような気分でした。ヒナタが何者なのかとか、そういうものの説明がないのが逆にひと夏の恋という話にブレを出さず、ふんわり感が出ていて個人的に好きです。
気になる男の子が出来たところとか、初めて目が合ったとか、やっと恋心を自覚したとか、劇的ではないけれどもこの話では重要な何気ないことが丁寧に描かれているのも、入り込みやすかったです。あんまり多くは語らないヒナタの、ユキノへの返事が無言のキス(最後にはっきり返事してくれてましたが)ってのも思わず画面見ながらキャーってなるくらい、らしくて甘酸っぱかったです。
実態も感触もないけど確かにキスでしかないと認識しているシーンは、とても女の子らしい表現かつ相手が普通の人間ではないという切なさもあって素敵でした。その手前の、髪の毛をピンで留められて恥ずかしがるヒナタもかわいい。奇をてらわない作品にはその作品特有の良さがある、そんな作品です。
チリーンの物語への生かし方も、基本的に物語の演出程度に留まっていますが(あくまでユキノとヒナタがメインだったという意味で)、このふんわりした感じのお話にはこのくらいが合ってたんじゃないかなあと個人的には思います。後ヌケニンのゴーストダイブの使い方が上手いですね。全然違うけど夜の学校探検っぽくてわくわくするというか。苦手な本を読んでみようという気になって、恋を知って、ユキノという一人の女の子が少し成長を見せたように思います。
以下細かい小ネタ的な感想
・相棒がセミ(テッカニン)のぬけがらだというのも、夏の思い出っぽいなと個人的に思いました。
・占いのくだりが楽しかったです。ポケモン世界らしいメブキジカ座という言い方とかやたらテンション高いマダムとか。
・全体的な雰囲気が良かったです。切なくも終始穏やかな雰囲気で終わっていったのが好印象でした。
・タイトルにもなっている、ヒナタの名前を知る前の『風鈴の君』って呼び方が少女小説のようで素敵です。
- 焼き肉
- 2014/08/16 (Sat) 13:35:13