A久T止世界

 2003年末、あなたを悩ませた苦い思い出を蘇らせます。

 作品URL
 http://snivy-bksf.pepper.jp/mtsg-kikaku/mtsg.cgi?mode=view&no=1&id=motsuku

 お題:「開花」
 縛りポケモン:「トロピウス」

  • 水雲(もつく)
  • URL
  • 2014/05/03 (Sat) 22:57:54
Re: A久T止世界
文章・文法:5.0
ストーリー:4.5

とりあえず発想がすごいです。時間が止まって木の実が育たなくなったことをネタにするなんて、普通はできません。
悪く言えば発想だけなのですが、メッセージ性やテーマ性を省いた分設定の面白さがより際立ったと考えます。
ひとつ疑問なのは、何故トロピウスより先に主人の時間が止まったのかというところです。きのみ→主人→トロピウスの順に狂い始めたわけですが、その順番である理由は何なのか、そこが定言されてほしかったなと。
また、ネイティオの言っていることが難しくて分からないとトロピウスは言っていましたが、それでも結構このトロピウスもかしこいという印象を持ちました。この小説においての知能の高さは、エスパータイプであるネイティオが一番で、トロピウスと人間が同じくらいといった感じだと思いますが、そこに違和感を持つ人(ポケモンより人間の方が知能が優れていると考えている人)には、ややこの設定は入り込みにくいかもしれません。今回ポケモン視点の小説が多いので、「ポケモンにどの程度の知能と知識をもたせるか」に関しては、結構議論が発生しそうですね。

文章はかなり上手いと思います。独特の言い回しが癖になります。『差し迫る状況下に置かれた焦燥心の裏返しでもあるのだろう。』『主人と一緒に悩む姿で己を偽ることにより、策を練る形を取ることにより、事態の好転を愚かしくも祈っていたのだ。』などのように複雑な心理を的確にかつわかりやすい文で表現できる力量には脱帽です。

  • 逆行
  • 2014/05/18 (Sun) 12:50:33
Re: A久T止世界
文章・文法評価 4.5
ストーリー評価 4.5

 水雲さん作品では珍しく、若干ホラー要素のかかったお話。
 トロピウスの一人称視点ならではの物語の進め方で非常に読みやすかったです。
 ストーリーも面白く、元ネタを知らない人でも十分楽しめる作品だったと思います。
 徐々にトロピウスが狂い出して、最終的にいつもの日々が始まるという最後も中々良かったと思います。
 しかし、残念ながら他にも良い作品があったため敢えてどちらも4.5ということにしました。ご了承ください。
 かなり個人的ですが、タイトルの意味なんかもかなり気になるところです。
  • 天草かける
  • 2014/05/23 (Fri) 00:16:34
Re: A久T止世界
文章・文法:4.0点
ストーリー:3.5点

元ネタが分からなかった組であります。
開口一番にそれかよってなりそうですが、すみません元ネタが分かりませんでした。
あるえ?ポケモンは全部やってるはずなのにどうしてだろうと必死に頭を捻らせて捻らせて結局出なかったorz

という話は置いといて、
とても個性的な話でした。今回ほんのりふわりとした展開の物語が多かった分、時折背筋に冷たいものが走る感覚のあるストーリーに少しわくわくしました。
トロピウスの一人称から語られる物語が可愛らしい反面ストーリーの不気味さを更に押し上げていてただ怖いだけじゃない物語の書き方には思わず唸らされました。
少し残念だなと思ったのが、ループからは結局抜け出せなかったところです。物語の終わりとしてはホラーを残しつつで良かったのかもしれませんが、せっかくだし独自解釈からのループ脱却ENDも良かったかなと。
『開花』がテーマなので停滞ENDに少しだけしこりが残った。そんな気がしました。
  • 旅がらす
  • 2014/05/23 (Fri) 20:14:25
評価・感想
文章評価:4.0
内容評価:4.0
感想
 投稿お疲れ様でした。
 とにかく発想ですね……! タイトルと一文目のインパクトが半端なかったです。こんな感じにポケモン世界を解釈するのはとてもおもしろいと思いました。
 文章面では、地の文の表現が巧いなあと思います。言い回しが素敵であってかつ意味的にも非常にわかりやすい。癖になる感じですね。
 理知的な文章という表現が似合う気がします。これはこれで読みやすいのですが、トロピウスが狼狽する後半部には、もう少し感情的な描写を多めに挟んでもいいかなあとは思いました。一貫して文章が整えてあるのに対し、トロピウスの心には徐々に焦りや恐れが生まれてるはずです。なので、それに合わせて文章の雰囲気が変わるとよりよくなるような気がします。
 内容は終始木の実ネタでしたね。この発想自体がとても面白いので、余計な要素を限りなく切り捨てていったのは、ネタを際立たせる意味で良い方向に働いているなと思います。
 トロピウスが想像以上に頭の回転が速くてびっくりしました。知能レベルはあのくらいでもいいと思うのですが、知識の面で一般人に引けを取らないというのは頭良すぎかなあという気もします。地の文の独特な言い回しがその異端さをより鮮明にしている感じもしました。
 特に『近似値として1を仮称することはできるが、完璧なそれには永遠にたどり着けない。』という部分が個人的に突っかかります。はっきりとは言えないのですが、トロピウスがこういう言葉を知っていることに違和感を感じるんですよね。
 他に引っかかる部分はありませんでした。少しぞくっとする締めに憧れているので、この作品のラストはとても好きです。
  • ホープ
  • 2014/05/23 (Fri) 22:36:05
A久T止世界 投票

文章・文法:5.0
ストーリー:4.5

素敵なところ
・まずはじめに至極個人的な嗜好で恐縮ですが、ゲームのシステムをうまく使っている作品と、因果性のジレンマ的な話と、ループものが大好物です。懐かしのきのみ問題ネタにルビサファリメイク発表時期と重なって、水雲さんにはネイティオ並の予知能力があるんじゃないかと思いました。
・作品自体はトロピウスの一人称で綴られているものの、時折四人称らしき部分が出てきたりと問題の渦中から一歩引いたような立ち位置にいるおかげで、未曾有の混乱に対して作中キャラクターの中では冷静に「語り部」を務められていると思います。幸か不幸か、それが遠因で世界と一緒に狂えなかったのかなあとか想像したり。これもう評価じゃなくて考察だ。
・じわじわと言葉で外堀を埋めるように読者とトロピウスを追い詰めてく文章が鮮やかで見事としかいいようがありません。ネイティオのともすれば専門的になりそうな話も、トロピウスが噛み砕いてくれるおかげでつまずくことなく読むことが出来ました。

気になったところ
・企画じゃなければ満点をつけたいところなのですが、テーマがあまり内容と噛み合っていないように感じました。「花」であれば「開かない」ことも選択肢のひとつであったとは思うのですが……この一点で減点しています。
  • 赤星
  • 2014/05/23 (Fri) 22:47:17
Re: A久T止世界
文章・文法:5.0
ストーリー:4.5

 リアルタイムでこの現象を味わったわけではないですが、初めて出くわしたときに呆然としたのは記憶に残っております。タイトルと時期でピンと来てしまい、少なからず先入観を持って読んでしまったのは、読む側たる私のほうの問題なのでしょうか。
 前置きはこのくらいで。最も印象に残った作品でした。「開花」という言葉には物事が盛んになるとか栄えるというわりと「前進」的な意味があるそうで、それをあえてきのみや世界の「停滞」という真逆のものと絡ませたことがその一番の要因かと思います。序盤や終盤直前(リモコンを取り落すあたりまで?)などのところとラストの表現との落差、これは秀逸だと感じました。
 中盤のネイティオとの会話なのですが、ここは理屈っぽくて回りくどいネイティオの性格を描き出しているという点では非常に良いのですが、この現象を知っていて結末もある程度予測可能な前提で読んでしまうと、物語全体としての流れがここで減速してしまうイメージを受けました。「先に進みたいけど読んで理解しておかないと分からないかな」といった具合です。個人差と言ってしまえばそれまでなのですが……。引っかかってしまったという私個人の感想です。
 一つ一つの言い回しにおいてはとても巧妙で素晴らしく、即決で満点です。終盤等は特に、ぞわりと背筋を凍らせられました。彼らは明日も『昨日の次に来た今日』を生きることになるのでしょうか……。
  • ポリゴ糖
  • 2014/05/23 (Fri) 23:46:14

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